手頃ながら高品質、エレガントな美しさを持つElliot Havok Quarter Century Watchレビュー


今回はHavok Timepiecesにより提供いただいた「Quarter Century Watch」Sandstone Gold版をレビューさせていただく。

同社は2015年よりKickstarterで「HAVOK - Most Backed Minimalist Watch」を成功させ、続いて「HAVOK RACER CHRONOGRAPH - Disrupting Luxury Watches Again」、そして「Quarter Century Watch | The Best Watch Under $100」と既に3つのプロジェクトを成功させている腕時計メーカー。今回レビューするのはこの3番目のプロジェクトからの製品だ。なお、後述するが、現在同社は4番目のKickstarterプロジェクトを行っているところだ。



素敵な腕時計を見つけて「あ、欲しいな」なんて思って値札を見たらバカバカしくなってしまった、そんなことはないだろうか。腕時計と言っても質も価格もピンキリだ。100円ショップで買えるものから数十億円もするものまである。私は高級腕時計には疎いが、高級であればあるほど特に、なぜそこまで値段がするのか訝しく思うのは当然だろう。高ければ高いほど良い訳ではない。

そんな中で、Havok Timepiecesのプロジェクトの凄いところは細かい価格の内訳まで各プロジェクトで公開しているというところにある。例えば今回レビューするQuarter Century Watchであればレザーバンドが7.35ドル、内部部品14.20ドル、ダイヤルとケースが15.82ドル、組み立て作業費が15.75ドル、送料類が8.95ドルの62.07ドルに(*これにはデザイン料やプロモーションに価格費用が含まれていないことにも留意すべきだろう)、利益を足して、販売価格150ドルという内訳。時計からスマートフォンに無理やり話を移せば、スマートフォン製造会社でちゃんと価格の内訳を公表しているところはFairphoneくらいのものだろう。AppleのiPhone Xなんかは11万以上の値段で売られているのに、Time.comによれば部品の価格だけ見れば370ドルくらいだそうだ。

内訳を明かしてなお安価なHavok Timepiecesのプロジェクトだが、これは一般消費者が購入するに至るまでには、小売り業者を挟まねばならず、製造社が消費者に直接時計を届けることで、時計の価格が小売業者の取り分の分安くなるということで実現している。そのせいで本当はそこまで高く売らなくてもいいはずの時計が、どんどん手を出しづらい高級なものになる、なので私たちはその部分は無しで、良質で手の届く価格のものを提供しますよ、というわけ。クラウドファンディングで資金を募る他の腕時計会社も同点をアピールしているところが多い。(もちろん実際には高級時計が高級である理由はもっと複雑だし、そこには投資とか機能性以外に無駄に貴金属や宝石をちりばめているため値が張るものもあるが)

だがフォーブス(Forbes)も「お手頃価格のハイエンド腕時計」と評価した同社の腕時計、その品質はいかがだろうか…。



開封



漆黒のパッケージは、デボス加工でモデル名やロゴが刻まれ高級感がある。


裏面にはシェイクスピアの引用「1分遅れるより、3時間早いほうがいい」。


表裏面には保護シール、クラウンの頭にも青い保護シールが貼られており、クラウンは引かれた状態で、押し込まれないようプラスチックの部品がついていた。



時計部



採用しているムーブメントはスイスRonda社製のクオーツ。価格内訳からもわかるように、これはさほど高いものではないが、高級ブランドの内部にも用いられるムーブメントだ。品番は751e。バッテリーは364で、標準的なバッテリー寿命は10年とされる。


文字盤はとてもシンプル。12時の位置にはElliot Havokのトレードマークともいえる赤い菱形が位置している。針は長針と短針の2針のみのミニマリスティックな仕様。両針とも蓄光する。文字盤面の大きさは37mm。情報量が少なく、盤面が大きいこともあり、時刻の可視性は非常に良い。

文字盤を守るのは、モース硬度9、ダイヤモンドに次いで硬いサファイアクリスタルだ。このサファイアクリスタルは元々は高級時計によく使われているほか、最近ではAppleのApple Watchにも採用されている。なお、Havok TimepiecesがプロジェクトページでこのQuarter Century Watchの比較対象としている100ドル以下の時計の中でサファイアクリスタルを持つものはなく、採用されている比較対象はどれも500ドル以上のモデルとなっている。

ベゼル部分は軽量で強い316Lステンレススティールで作られている。文字盤の外枠となる部分のみが艶出し仕上げで、それ以外の部分はサンドブラストされた艶消し仕上げとなかなか凝っている。ケースの大きさは41mmで、文字盤の大きさが37mmであることからもベゼルは狭く、その分文字盤が目立つと言えるだろう。大きめのケースながらも、本体部分の厚さは7mmと薄さも際立つ。


そのうえ、実際に「厚さ7mm」である最厚部分は時計バックパネルの手首に触れる中央面だけで、バックパネルは端に行くにつれ上向きに傾斜しているので、見た目は実質的に7mmよりもだいぶ薄い感じだ。これはただ見た目以上の意味を持っており、この背面が沿った形状であるため手首との接地面は少なく、動きが制限されづらい(このため蒸れにくいのではないかとも思うが、あいにく今は外気温が―21°と寒いため試せそうにない)。


(写真のクラウンにはまだ青い保護シールがついている状態だ)

クラウンには、つまみやすいクロスハッチ模様が刻まれている。クラウンの位置も工夫されている。もし3時の位置にクラウンがあれば、その部分が時計側面の一番突出した部分となりものが引っ掛かりやすくなるのだが、4時の位置に配されているために引っ掛かりづらく、手首の動きも阻害しない。クラウンの頭にはデボス加工(模様が浮き出ているからエンボス加工じゃないかとも思うが、プロジェクトページによればデボス加工)でロゴが。ロゴは熟練の職人技と細部への注意を意味する万年筆とハンマーとなっている。なおこのロゴはバックプレートにも記されている。

このほか、Quarter Century Watchは5ATM、5気圧防水ともなっているので少々の水にもびくともしない。



ベルト




ベルト部分はイタリア産の植物タンニンなめし(ベジタブルタン/詳細は「Satchel & Page Port 13" サンプルレビュー」参照のこと)されたフルグレインレザー。いまだ新品なため「ブルーム」と呼ばれるロウが表面に出ている状態なので白く粉吹いて見えるが、これは時間が経つにつれて無くなっていく。嬉しいのはこのベルトにクイックリリースストラップが採用されていること。これはPebble Timeなどにも採用されており、時計との接続部分にぽっちがついていて、それを引くことで道具なしで簡単にベルトが外せるというものだ。

金具部分も時計ベゼルの色とマッチしたステンレススティールで、「HAVOK」の刻印が施されている。少し残念だったのはベルトの縫い糸の留め部分がどちらのベルトも表面になってしまっていること。そして、金具に近いほうのベルトループがきちんと固定されておらず、外れてしまったことにある。これは、まだ使い始めたばかりの皮であるため、全体的に柔軟性がまだないことも起因するだろうが、金具から遠いほうのベルトループ(両端が縫い合わされている)と違い、こちらの部材は帯がベルト内部で接着されているのみで、外れてしまうのだ。これは他の個体では起こらない可能性もあるが、革細工をしている身から言わせてもらえばこの点はデザインミスと言えるだろう。

写真右のベルトループ部分が外れている




クオーター・センチュリー



この時計のモデル名ともなっている「Quarter Century Watch」というのはクオーター・センチュリー=25年間は壊れることなく使い続けることができることを目指して各部がデザインされているためにつけられた名称。もちろん25年間保証がついている。150ドルちょっとで25年持つと考えた時のコストパフォーマンスの高さもすごいものだ。もちろん100年経っても動き続けるおじいさんの古時計のように長くは使えないかもしれない、だがもちろん25年で動きを止めるという保証もなく、壊れない限りは使い続けることができるだろう(壊れたとしても、クオーツ部分を入れ替えれば使えるようになるんじゃないかとも思うが)。


まとめ



Quarter Century Watchは、「安かろう悪かろう」ではなく、安価ながらもデザインと品質を兼ね備えたエレガントな腕時計だ。


シンプルで美しく、なによりも時を示すという時計の機能をシンプルに美しく表現した腕時計だと思う。デザインも、ベルトこそ少し残念ではあったが、細かなところまで考えられ作りこまれているし、サファイアガラスの採用で丈夫な風防部や、5気圧防水も嬉しい。

このQuarter Century Watchをご購入したいという方は、Elliot Havokブランドウェブサイトから150ドル+国際送料13ドルの計163ドル(約1万7000円)で購入可能となっている。Quarter Century Watchシリーズのほかにも、85ドルからの「Havok Watch」シリーズや、199ドルのクロノグラフ「Racer Chronograph」シリーズも購入可能だ。





この場をお借りして、今回レビューする機会を与えてくれたElliot Havokの創設者でCEOのSteven Elliot Ng氏に感謝したい。

なお氏は弱冠25歳ながら、Forbesの選ぶ30歳以下の各業界に革新をもたらす人物を選出する「30 Under 30」2017年版の小売り/Eコマース部門で選出されている凄い人物だ。




なお現在Havok Timepiecesは最新モデル「Travel Watch」プロジェクトをKickstarterで展開中。こちらは文字盤に刻まれた都市名と、時刻と共に回転する文字盤の数字を見ることにより該当タイムゾーンの国の時間がすぐにわかるという超画期的なシステムを採用している。



現時点でプロジェクト終了まで43日を残し日を残し目標金額の900%近い金額を集めている。


(abcxyz)

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