見えないところまで拘りぬいた日本のフィギュア。でも身体バランスが悪すぎる?



多くの方がもうお気づきかもしれないが、私はフィギュアとかおもちゃが大好きだ。特に日本のフィギュアは、ディテールにこだわりながらも豊かな可動性をもち、さらには可動部分をうまく隠したものなどがあり、それを可能にする造形デザインの職人技には感動する。

だが、特に昨今のフィギュアで気に入らないことが一つある。それは「でたらめな比率」だ。これは日本のフィギュアにも海外製のフィギュアにも見られることだが、特に日本で作られたものに顕著なようである。

特に酷いのは頭の小ささだ。「七頭身が素敵」なんて誰が思いついたアイデアか知らないが、そもそものフィギュア化する元のキャラクターがそうならまだいいのだが、「リアリティーを重視」したものにそんな傾向があるのが解せない。矛盾してるし。

例えば「スター・ウォーズ」シリーズ。S.H.フィギュアーツのオビ=ワン。







バンダイのプラモデルなんかは変に首周りの姿勢にリアリティーがあるにもかかわらず、「体全体のバランス」をまったく考慮していないかのようなキモチワルイ造形。しかも悪いことに、これはヘルメットをかぶっているキャラクターなのだ。





S.H.フィギュアーツのファースト・オーダー ストームトルーパーは、太ももの肉厚感はハズブロ/タカラトミー版よりもリアルな感じだが、それでも頭は小さく感じる。





ハズブロ(米)/タカラトミー版ファースト・オーダーストームトルーパー(ブラックシリーズ)はといえば、他のどのブラックシリーズと同じく腕が長くてキモチワルイ。





顔の見えるキャラだと腕の長さがより気持ち悪く見える。





一方、価格帯もサイズも違うが、ホットトイズ(香港)のファースト・オーダー ストームトルーパーは、(この商品はヘルメットが外せないにもかかわらず)「ヘルメットをかぶっている感」のある、リアルな身体比率。





ヘルメットといえば、アイアンマンも忘れてはならない。




リボルテックのアイアンマンは無視しようと思ったのだがすこし書いておく。そもそもリボルテックのアイアンマンは元のデザインに似せる気はなく、独自の「マッシヴ」なスタイルになっている。それは好き嫌いあるだろうが、関節部分の「立体造形物を適当にちぎってリボルバージョイントを埋め込んだだけ」というやる気のなさには閉口する。





アイアンマン Mark Vをフィギュア化してくれたことはうれしいんだが、やっぱり関節部分に美意識が欠けている。関節の位置も「造形物をこう切るしかなかったからこの位置に関節を置くしかなかった」みたいな適当さがある。





参考までに『アイアンマン3』。そもそもこのスーツの中にロバート・ダウニーJr.が全部あの身体バランスで入るのかも怪しいが。






COMICAVE STUDIOSの1/12アイアンマン・マーク43はそう考えると全体的なバランスは悪くないかもしれない。でも股、足回りがなんか不自然に見えるんだよなぁ。





figmaのは上半身だけ見ると猪首感とかはそれっぽいけどちょっと足が長いかな。関節部分の表現は面白いけど。





こちらは『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』トレーラー。日本版トレーラーのバカげたフィットしない音楽はどんな層を喜ばそうと、どんな層に映画に対する興味を失わせようとしているのかわからないが、よくないので海外版を。





S.H.フィギュアーツのアイアンマンは可動性にも造形美にも優れたシリーズだが、どう見てもあの頭の中に人間の頭は入らない。





メディコム・トイ、MAFEXのアイアンマンマーク45は「人っぽい」感じ。





ホットトイズの1/6、さすがにこれはリアル。





とはいえホットトイズも万能ではない。




顔のあるキャラクターの造形のリアリティーはホットトイズに勝るものはないだろう。芸術的なその造形はそれだけとっても十分価値のある存在だ。だが、人間的な関節の動きの表現などについてはまだまだ改善の余地は(1/6だと猶更)あるはずだ。






スクエニのPlay Arts改はその(顔の)スタイルとかが苦手で嫌いなのだが、アイアンマンはバランスとしては、特に上のフィギュアのバランスの悪い例と見比べると「小顔なモデル」がそのままそこにいるかのような身体バランス。でもあまりにも人間っぽい雰囲気で、キャラクターの設定をうまく生かしたデザインには思わないけど。ウルトラマンでいいんじゃないこれ?





「まったく最近のフィギュアはバランスが悪い!」と不満をつらつらと述べてきたつもりだが、なんだかこうしてみてみると、より値段の高いもの(ホットトイズ)や、新しいもの(まだ予約受付段階で発売が年末以降とか)に関しては、身体バランスも考慮されてきているのかもしれない。

たぶんどの「バランスが悪い」フィギュアも、もとを正せば古い絵画や、転じてミケランジェロなどの彫刻家により立体化された「人間の理想のバランス像」や、七頭身(もしくはそれ以上)至上主義的な、ファッションモデルやある意味コミックや漫画などで美化され過剰にバランスを崩された人間の身体表現からそのようなカタチになっているのだろう。だが、リアリティーを重視した立体造形にも評価が上がる中で、美化された身体の比率とリアリティー、この2点のバランスをどうとるかにこれからのフィギュアは悩んでいくことだろう。

なんて適当なことを書いたりして。



唯一頭の小ささが小さくてもそれ以外の面で感動させてくれるものも紹介しておこう。千値練のRE:EDIT IRON MANシリーズは、感動する。関節の仕組み、スタイリッシュな見た目を犠牲にすることなしに可動域を広げるための機構。これぞ日本の誇る見えないところまで配慮した匠技だ(頭は小さいが)。





千値練のすごいところのもう一つは、「千値練スタッフブログ」にある。試作段階のものも多数の写真で紹介し製品の魅力をあますことなく見せつけていて、ブログ見ているだけで(物欲と)感動のため息を漏らしてしまう。




事実私もブログで紹介されたRE:EDIT IRON MAN #02 Extremis Armorの魅力に負けて購入してしまった。

バンダイがどんなに頑張って身のないインタビュー(擬音ばかりで画が伴っていないので魅力がさっぱり)や、(自分も人のこと言えないが)質の悪い写真は差し引いても作った人がどこに注力して作ったかを紹介しきれていないブログ記事を書いて超合金ハルクバスターを宣伝したって、千値練のハルクバスターの記事には敵いっこない





このギミックがもしなかったとしても、ブログ記事だけで千値練版を買ってしまいたくなる。そんな魅力が千値練のブログには詰まっている。






追記:そうそう、忘れていたが、メディコムMAFEXの映画『SUICIDE SQUAD』版Harley Quinnは賞賛に値する。人間的なボディーラインを過度に美化することなく立体化している(写真で見る限りはそのように見える、発売予定は来年)。







これは、同じMAFEXシリーズでもアン・ハサウェイ演じたキャットウーマンの立体化とはまた違う感じだ。見た目よりも可動性を重視したためか、はたまたおもちゃに人間的な体の統一性などいらない、なんて考えたのかわからないが、細身の体は表現できているが、全体を見ると関節のつながり方の中に人間っぽさは消えていってしまっている。








(abcxyz)

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